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高級食材になったトマトさん

古い喫茶店に来る。カウンター席に座ってコーヒーを飲んでいると、店主と思わしき白髪の男性がてきぱきと調理をしたり飲み物を作ったりしている。しばらく見ていると、サラダやコーヒー等をまとめて作っている。つまりよくオーダーされるものは五人分を一度に作っておいて、効率性を上げている。個人的には五五〇円(税抜)もするブレンドコーヒーは一杯ずつ粉から抽出してほしいのだが、それは今回の話の趣旨ではないし、その無駄のない店主の作業をながめているのは、全然悪くなかった。そのような職人的な動きは、機能的でありながら一種の良く考えられた庭園のように、風景を作り出していた。
誰かがセットを注文すると、四人分のサラダがまとめて作られた。横から若い女性がやってきて(たぶんアルバイトだ)、店主の膝元にある冷蔵庫があけられた。中からミニトマトが取り出され、サラダの上にひとつづつ置かれた。それを見て僕は「ついに」と思った。ついにこの時が来た、と。僕は大分前から、最近はどのレストランもいわゆる「セット付サラダ」にトマトを入れない、と考えていたからだ。そして実際に、前年から続けて半年ぐらいは、僕の食べた「セット付サラダ」には、トマトが(ミニトマトさえ)入っていなかったからである。
レタスが一番底にしかれ、細切りのキャベツが山のように盛られた。その頂点にミニトマトが置かれる。仕上げにドレッシングをかける。トマトの「セット付サラダ」における必要性は、実際に目にすれば誰でも判断がつくと思う。僕はそこにトマト込みの「セット付サラダ」が未だ存在したことで、その形式をしっかり心にとどめておくことが出来たのだ。あなたにとって「セット付サラダ」とはどんなものでしょうか?それがトマト込みであれば、何故か僕は嬉しいのです。(201603)
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2016.04.10(Sun) - 詩と作文 2016





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