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ブライアン・エヴンソン 遁走状態

大切なときに自分自身の声を、言葉を、うまく発することができない。だが一人になることもできない。努力をしようとしたり、何かの役目を引き受けたり、誰かに頼ろうとすることを、止められない。追求と逃亡、理解と無理解、信頼と裏切り。それらを単なる出来事の連鎖として描くのではなく、登場人物の内面「処理」と一緒に提出すること。
独り言をいっているにもかかわらず、話し相手として読者を想定しているかのようにすること。妻を受け入れるのと引きかえに、同程度の要求を妻に受け入れさせようとすること。どんどんと本当のことがわからなくなり、自主的にものを言わなくなっていくこと。
ホラーのような明るみの見えない世界をはっきりと土台として、その世界の運行プロセスは単なる恐怖だけではなく、作者の言葉通り、そこで人々はそれぞれの持ち味を発揮して「何とか生き抜こうとしている」。

「追われて(a pursuit)」
二番目の妻の好みの煙草はダンヒル。元夫は三人の元妻から、ダンヒルを吸って集中力を高めながら、逃げ続ける。
p26「もしかすると君は、運転している私の隣に座っている君は、自分だけは説明を受けてしかるべきであると感じているかもしれない。」
「私の隣には誰もいない。フランス人の言うごとく、私は独り言を言っている。」

「助けになる(Helpful)」
両眼と鼻を失った男が、自らを助けようとする妻を避け、新しい自分なりの生き方を獲得していく。
p223「同じ空間にいても、その空間で違った生き方をして、違った世界を占めているのだ。(中略)妻にはそれさえわからない。とはいえ、こっちも努力はすべきだろう。助けになろうとするなら、させてやろう。彼は何度も妻の背中を軽く叩いた。
でもなぜ、と彼の中のある部分が問うていた。なぜお前の世界で関係を持たなくちゃいけない?なぜ俺の世界じゃない?」

「父のいない暮らし(Life without Father)」
父の自ら招いた偶然の死を見ていた少女は、母が死の原因だと警察に話してしまう。
p238「叔母さんは寄ってきて、片腕を彼女の体に回した。「ねぇ、ダーリン」と叔母さんは言った。「ごめんなさい、余計なこと言っちゃったわね。あなたの気持ち、わかるわ。何といってもあなたのお母さんだものね。でも忘れちゃ駄目よ、お父さんのことも」」
「だって」とイリーズは言った。
「あなたのお母さんがいなかったら」と叔母さんは言った。「お父さんはいまごろまだ生きてるのよ」
p241「しばらくしてドアが開き、母が連れてこられた。」
「母は不安げに、娘に向かって微笑んだ。
「ダーリン」と母は言った。「お願い、この人たちに言ってちょうだい、私と関係ないんだって」」

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015





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