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녹전탕

木曜日の二時過ぎに、五千ウォンを払って鹿島湯に行きます。他の時間に他の銭湯にはいきません。なぜなら心が混乱してしまうからです。同じ時間、同じ建物、同じ混み具合。同じロッカーなどであれば、なお望ましいのです。とつぜん旅客機のように墜落する心配もありません。地震もありません。
待ってください―このもうひとりの僕の掛け声は、考えを改めさせることになります―心配がおそってくる場所がひとつだけあります。サウナです。松明がはじけるような音をだしたり、とつぜん植物臭のスチームを出したりする、密室を高温にする機械。あれだけは今この瞬間に爆発してしまうという不安をぬぐいされません。フィンランド・サウナとスチーム・サウナは地上五階建てのラーメン構造の一グリッドのなかに、設備機器もろともおさめられています。二つを隔てる間仕切壁には、ガラス製の室内窓があり、お互い裸になった男だけの世界が見えるようになっていますが、何の設計意図かとかんぐってみますと、やはりこの唯一の不安である、配管の決定的なつまりや、耐用年数以上の運転によるほころびに端を発した空間の消滅をまぎらわすために、違いありません。わざわざフィンランドと名付けてみたり、室内を板張りや岩張りにして装飾したりしているのも、同様の理由であれば説明がつきます。座っているときには彫刻像のように美や厳格さをたたえている男の裸体も、爆発後の光景を想像すれば、その落差がはっきりしてくるでしょう。思わず機械のスイッチをさがしてしまいたくもなります―この唯一の、不安をいっしんに背負わされている二つの部屋をのぞけば、浴場はかなり解放的です。この国では前を隠す手ぬぐいが不要なので、置き忘れや盗難や紛失による捜索といったことは、ロッカー・キーについているバンドがちぎれでもしない限り、ありえません。ですから、湯に浸かったり、体を洗ったりする空間は、ブルーグレーのタイルで統一されて、無装飾なのです。温度表示の赤い発行文字ぐらいでしょう、意味を押しつけてくるのは。この国の言葉がわからないというのも、あながち悪いことだけではないのです。
サウナを出て、新鮮な水を肩に思い切って浴びせます。それから迷うことなく、水風呂に浸かると、寒暖の差だけではない、爆発死から逃れたという喜びもあいまって、一種の桃源郷であります。誇張のしすぎだと思われるでしょうか。ですが、それは説明をもう少しさせていただいたあとに、判断いただければと思うのです。というのも、この銭湯論に不安がないわけではないのです。多少の装飾過多による不安の払拭は、今は大目にみていただきたく存じます。
さて、“中”水風呂では水泳がされたり、ストレッチ運動がされたりしています。同時に、じっと、ゆっくりと浸かっている人もいます。浴槽の大きさは、二グリッドより少し小さいぐらいでしょうか。あくまで目分量ですが、浴場全体は、五×五、五×六の計二五~三〇グリッドのようですから、かなり大きな割合をしめています。湯温はプールより少し低いぐらいです。実は鹿島湯には、もうひとつ“小”水風呂があって、こちらは超低温で三畳ほどの大きさです。いわばこれが川の最上流、湧き水の出る新鮮な源のような雰囲気をただよわせているのに対して、“中”水風呂は蛇行の途中の巨石の間にできた、水流の溜まり場のような場所です。“中”水風呂の上には、トップライトが設けられていますが、その形状は平凡な切妻型で、陽光そのものを提供しています。そんな具合ですから、僕も頭まで臆面することなく潜り、数個のあぶくを鼻から出すことさえ、容易にできてしまうのです。水深の浅さから立つというよりは、どちらかといえばやはり座って使うというような恰好であること、また平泳ぎをするにしても、一かきで大人ならば確実に反対の短辺まで到達してしまう点が、プールに堕ちていない、人工的でもあり自然的でもある、また別の由縁でしょう。
大体においては気遣いというほどのものはなく、渋滞でバンパーをぶつけないくらいの意識があれば、あとは自由にしていて差支えありません。専用の洗い場に行って、セルフ・垢すりに混じるのも結構です。体勢というものは実に自由であるということが、よく分かります。ですが、一つ真似ができそうもなかったことがあります。
中央に高温・低温それぞれ一グリッドずつ、計二グリッドの温泉浴槽があるのですが、そのまわりの通路にあたる部分に、人が横になって目を閉じています。どうやら川原の石の上だと思い込んで、眠りについてしまったらしいのです。そこからみれば、古いオフィスビルをぎりぎりでかわしてつくられた高速道路よろしく、人々の足という足が自分に当たりそうになるのがかんじられるはずです。それにしても、一度たりとも蹴られたりしたことが…騒動がもちあがって、浴槽脇寝禁止令などが発せられたことがないのでしょうか。いや、不法占拠などといったら、せっかくの桃源郷が台無しです。それぞれが五千ウォン分の重さの、不安からの解放地帯である以上、蹴ってしまうかもしれないという、一人一人のわずかな眼のつぶやきを、極大にしてしまう理由は、ないのです。
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2014.03.27(Thu) - 釜山 2014





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