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3日目前半(要点)

100919・要点・前半

静かな一人歩き
空に鳥が飛ぶ。丘に向かう。
斜面と道、墓が遠くのほうに見える。

丘の上は平たい広場になっていて
一人の女が体操をしている。
景色をみる。
それを写真でとる。するとすぐに女は走り去る。
広場の中央に正方形に切られた石の囲いのなかに、
花の残骸が捨てられている。

火葬場の裏側に到着する
ファサードは同じで、そちらもまた表側のように見える。
足が痛くなってくる。
アスプルンドの言葉が頭によぎる。
「今日は私、明日はあなた」

後戻りして、まっすぐの道を往復する
入り口にたまった人だかり。
黒でまとめたガイドたち
日本人たちの会話が聞こえる。
参加証であるシールを腕にはる

先ほど通った右側をまたいく。
集団で歩くのと一人で歩くのとはまたちがう。
山岳部のようにもくもくと皆歩く。

丘を越え、林にはいる。
アスプルンドの設計した小さな教会につく。
入り口の門の手前でガイドが説明する。
「上に掲げられたカメオには、書いてあります。
”今日は私、明日はあなた”と」

林の中の芝生の上に、小さな墓が無数に点在している。
それらはよく見ると、直線上に並べられている。
ガイドがいう。
「すべての墓の位置は、
コンピューターによって管理されています。」
墓の大きさにはばらつきがあり、献花の様もいろいろだ。

森のまっすぐ伸びる道の先にみえる、
ギリシャ神殿にむかって歩く。
それはもうひとつの教会で、レヴェンツという建築家の設計である。

神殿風のファサードが模様のない茶色の塗り壁についている。
内部は、西側についた大きな窓から入ってくる光にあふれ
乳白色の壁には、大きくなめらかな、
ひび割れたような模様がついている。
それらはとても美しく、僕の心をゆれうごかす。

僕は質問する。「これはどうやってできたのですか?」
「これはコンクリートでできていますが、外壁の防水加工が確実ではありませんでした。水が進入したためにできた模様です。」

ガイは続けて言う。
「レヴェンツは数学にとても秀でていました。」
内部の要素の寸法の関係はよくわからないが、
きりりとした緊張感につつまれている。

ガイド・ツアーは森の中の小屋で解散となる。
アンケートが配られ、僕はそれをすばやく記入し、
小屋の中のトイレに急ぐ。
しかし中に誰かが入っている。
小屋の中を僕は尿意をまぎらわすためにぐるぐると周回する。
トイレはようやく開き、僕の尿は放出される。
ようやく緊張感から解放され、ドアをあけてみると
たくさんの日本人が、苦しそうな顔をして廊下にならんでいる。

ある部屋ではカフェとギフトショップが一体となっている。
ガイドが先ほどとはうってかわって疲れきった表情で
椅子に座り、パンを食べ、コーヒーを飲んでいる。
その横のギフトショップでは壁にむかってたくさんの人が立ち、
売り物の本をぺらぺらとめくっている。
僕の頭のなかは、レヴェンツのことでいっぱいであり、
彼の2つの教会が紹介された作品集を購入する。

僕は戻り道をいく。
入り口の外で、不思議に高さのそろった並木が出迎える。
車が60kmほどのスピードで通り過ぎる。

列車に乗り、ある駅で乗り換えの為に列車を降りる。
長いホームを一人あるく。
時刻は1時である。
日は低く、空は晴れており、駅の外は静かだ。
子供たちが遠くの鉄橋をわたって広くとられた乗換駅にやってくる。

別の線のとある駅で下車する。
レヴェンツの設計した教会がこのすぐちかくにあるはずだ。
濃い茶色の煉瓦でできた建物だ。
ぽっかりとあいた緑の林の中に隠れて、
それは密かな存在感を示している。

その背後に集合住宅があり、
その方向に人々があるいていく。
僕は彼らに混じって教会に近づく。

前を歩いていた2人の女が入り口近くまで近づいてから、
どこかへ立ち去る。
礼拝堂の中には誰もいない。
そこは静けさと暗さと光が充満している。
たくさんの小さなオレンジ色の照明がつるされている。
50mほどいった正面に祭壇が見え、
木製の長椅子がきれいに並べられている。
高窓や壁と壁の間にあけられたスリットから、天空光がさしている。
煉瓦は黒に近い茶色を発光している。

木製のおおきなパイプオルガンが、
工場に新しく導入された機械のように居心地悪くおかれている。
僕はその近くに座る。
スピーカー用と思われる電気コードが、
湾曲した屋根にそってきれいに設置されている。
それは壁まで伸び、ギザギザに折れ曲がって取り付けられている。

デジタルカメラを取り出し撮影する。
電子音が誰もいない部屋の中に発せられる。
僕はしばらく休憩する。
だれにもみられないように、水をひとくち口に含む。
それはのどを通り過ぎ、胃に達する。

僕は席を立ち、礼拝堂をつぶさに見回り
教会の内部、周囲を散策する。
十分な距離をとって囲むようにして設けられている道の上を、
子供たちや大人たちが通り過ぎていく。

僕は集合住宅に足を向ける。
線形に並べられた建物の間に、しずかに入り込む。
植えられた木々の先に、
カラフルな遊具が並べられ、
たくさんの子供たちが、にぎやかに遊び回っている。
建物のベランダも様々に工夫されている。
すべてがきれいに整理されている。

2時半ごろ列車に乗り、セントラルステーションに戻る。
ファースト・フード店で食事をとる。
名前はMAXだ。有名なチェーン店とガイドブックにかかれてあった。
時間がない。目に入った看板を指さして注文する。
「ディップがつきます。」
兄ちゃんが注文カウンターに貼られた小さなメニューを指さす。
「・・・チリソース。」
僕の答えはしばらく通じない。
チリソースの発音が通じない午後3時前。

小さなハンバーガーと大きなハンバーガー、
ポテト、チリソース、コーラ。76クローネ。それは1000円くらい。
まさか2つハンバーガーがついてくるとは思わなかった。
でも確認する気もおきなかった。値段が高いとも思わなかった。
チリソースの発音で精一杯だったのだ。

食べきれずに小さなハンバーガーを手に持ち、
ホテルに3時に戻る。
ぴったりだ。
カフェで男と女が待っている。
2人はこまをもっている。
もてあまして僕との時間をまっているかのように。


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2010.10.24(Sun) - 接待3


切て貼れ


1022

写真美術館へ。所蔵品の中から、よせあつめられた肖像画群が展示されていて、その中にいくつかいいものがあって、階上の附属図書館へいって、気に入った作家たちの写真集をみたが、それらはあまり心に響かなかった。どうやら一枚一枚見ていったほうが面白いようだと思った。

葉巻をとられたチャーチルがおもちゃをとられた子供のような無邪気さをかいまみせている、その背後にすっくとたったヘミングウェイは文庫本のカバーの作家紹介の口絵と全く同じ目つきで風貌で、無名のヒロシマの女の子を左前ににらみ彼女の白くなってしまった眼は見えない空を見上げ、その隙をねらって次のコーナーの影からいたずらをしかけようと悪さをしようとたくらんでいた2人のヤンキーのうち一人は不審をとがめたニューヨーク市警にこの男は本当にぶちぎれているのだという形相で銃口を向けてもう一人はそれをなだめようとしていて、その2ブロック先では観光に訪れた一昔前によく見たような日本人の群がプールサイドの木陰にところせましと陣取っている、つきあたりの路地を入って街区の中心部に面する4階の部屋ではかわいらしい音を立てて切られているピーマンの横でもうひとつのピーマンが最期の輝きを暖色照明によって放っていて、食事用のテーブルの上には果物がつつまれていた新聞紙をメイドが時間つぶしに丸めてひねてつくったモディリアーニのように細身の人形が玉遊びをしている。

ビアホールへ行き恵比寿さんを頼んでソーセージを食べたあと、駅前の薄暗い店でカンパリブラッドオレンジとポテトのポン酢和えを食し話し、3つ先の駅の玉転がし場へ向かいそこでカーブをかけるコツをつかめないまま低調な争いが終わったら、向かいの書店でぐうぜん自分の誕生日の本がぴたりとおいてある偶然に出会い、その道のつきあたりの路地を入ったコーヒーショップで話し、店外を歩き、2人は別れた後そのうち一人は階段を登って家に帰り、もう一人は列車の2駅先から50分歩いて家に帰り、寝ておきて歯を磨いくと机の上には誰が作ったのかおいしそうな朝食がのっていて、40分ほどで到着した映画館ではイチョウの間から芽をだした桜の根本で2人がかなわぬ恋をうれいていて一人は紀州家に嫁ぎもう一人はもののけ姫のように山に帰った。


2010.10.24(Sun) - 日本日記


2日目の夢


R1182966.jpg


僕は勝ったわけでも
負けたわけでも ない
だけどものたりない
心が くるしい

胸のあたりが うずく
うえにこみ上げてきて
何も手につかずに
いえをでる

地下鉄は進む
目的地にむかって ひた走る
ただ私は長い座席に座って
目を閉じたまま

日々がすぎてく
にげちゃいけない
いつのまにかにげてたら
自分で決めた道にもどっていかないと

そこらじゅうに落ちているはず
チャンスともよべない機会をひろっていけば
なんとかなるはず ドアの隙間から ほら
入ってくる 風はすずしい



テレビに出てる
人たちの何に あこがれる
その光がわたしを
暗闇のなかで てらしだしてる

この前までいっていた
旅行では わたし輝いてた
普段にもどったとたんに
何すりゃいいのか わからない

大手町について
わたしは目的地にいかずに
すこしまた寄り道を
してしまうだろう

それでもゆるしてください
未来の自分はかがやいてるはず
自分に鞭うちゃいいのか
ほめればいいのかわからない



頭に 冷房の風が強く
乗り換えホームの天井から 吹き付ける
スーツの大人たちは 自慢げに
堅い通路に 革靴を鳴らして 歩く

どうすればいいの
無理に頭冷やせば うまくいかなくて
そのままにすれば 傲慢になって
ケセラセラなんて信じれないし

地上に出ると
9月の自然な風が そっと肌にあたった
そのまま銭湯に足を向ける
体についたなにかを落としたいのか
ただぼうっとしたい それだけなのか


2010.10.05(Tue) - 接待2


2日目


100918


僕は目覚める。透明な緑のswatchで時間を確認する。目覚ましをかけていなかったが、朝食の時間にはまだなっていない。昨日4階の朝食場に7時半集合と決めたのだ。窓の外にホテルの壁面からすぐの位置に修理用の仮構が見える。短管やビニール製の布が雑然と現代アートの作品のように窓枠に縁取られている。景色を見ることはできないが、部屋のなかにあかるい光は入ってくる。しかしこれは、はずれの部屋だ。

テレビはphilips製である。僕は充電していたeneloopをデジタルカメラに装着する。iphoneの時間は自動的に現地時間に修正されている。トランクの中からmacbookとその周辺機器の入ったフライターグの小物入れを取り出し、デスクの隅に配置する。変換用のc型プラグもいくつか用意しておく。

昨日カウンターでもらった地図を用意する。僕は今日やるべき仕事を確認するため、同時に地球の歩き方ー北欧ーとA4ファイルを取り出す。もうこれだけでデスクの上はものでうめ尽くされている。不必要なものを引き出しのなかにしまい込む。そこにはすでに、革製のカバーで包まれたホテル内の案内書が眠っている。

今日はおそらく3人でまわることになる。やらなければならないことは、ストックホルム市立美術館へ行き、チケットを入手すること。これによって、明日、世界遺産「森の火葬場」のガイドツアーに参加することができる。僕はそれに一人で参加するのだ。だからあの男と女には関係ないが、どうにかうまく、ここを今日のルートに入れねばならない。

A4ファイルから別の地図を取り出す。これには建築の位置がところ狭しとプロットされている、日本の建築学生の間ではよく使われている本のコピーだ。かなり巨大な範囲を網羅した地図だから、これをすべて訪れることは不可能だ。私たちは明日の午後5時にストックホルムを出航し、ヘルシンキへ向かう。だから範囲の絞り込みが必要なのだ。しばらく地図を眺めてから、「ストックホルム市立図書館」とホテルの位置を確かめ、その間を散策することにすればいいと考える。ちょうど1kmほどの距離だから、そこを散策すれば街の様子もみることができるだろう。僕の目的は、ただただ有名建築をみることではない。

私はパソコンの電源を入れる。同時にc型プラグと充電器、外付けハードディスクをセットする。「市立図書館」の開館時間を探るため、あわよくばインターネットを活用しようと、受信を確認する。無線は飛んでおらず、インターネットをあきらめ、午後5時くらいに閉館するのだろうと予測する。私は前もって調べてあった「市立美術館」の開館時間と、「市立図書館」の名前を、ホテルのメモ帳にホテルのシャープペンシルで明記する。

メモ帳にまだ空欄がのこっている。そこで、地球の歩き方をめくる。僕はショッピングの欄で小さな記事を見つける。小さな店だが最近できた店らしい。日本ではあまり紹介されていないということで、ここの店の位置を確かめる。それはいわゆるダウンタウンと呼ばれる場所で、「市立美術館」から200mほどの場所にある。これをメモ帳とチェックインカウンターでもらった地図に明記する。

そろそろ朝食の時間である。部屋に電話がかかってくる。すると男の部屋からである。下で待ち合わせとのことだ。身支度を整え、下に向かう。もうすでに、男と女はテーブルで食事を始めている。簡単なあいさつをすませ、ビュッフェの方へ向かう。ゆでたまごとソーセージ、ハム、チーズ、パンなど問題はない。むしろ豪華だ。ひと安心して席につくと、大量の食べ物がのった皿がおかれており、彼らは満足げに食している。女は「チーズをこんなに日本でたべたらかなりの値段がする」といっている。男は「ハムはエルクか?」といっている。

私たちは今日の相談をする。とりあえず南へ向かうと、そこに旧市街がある。そこは「みとかなければならないだろう」というような場所で、古い町並みがのこっており、昔の王宮がある。そこで今日は、12時15分にパレードがあるらしい。水曜と土曜に行われているというそれを男は、小さなガイドブックで見つけてきた。地球の歩き方の半分ほどの厚さだ。「薄くていいね」と僕が賞賛すると男はいう。「このガイドブックの利点は何かわかるか?それは軽くて持ち運びしやすいことだ。」

僕はパレードに興味はなかったが、この時刻が具体的な指標となるのはとてもいいと感じている。計画がたてやすいからだ。それから男は国立美術館に行きたいという。僕の頭の中にはその位置はある程度正確にインプットされている。とにかくストックホルムの旧市街周辺は似たような大きさの小さな島が入り組んでおり、わかりづらい。それを小さなガイドブックで把握できるのかどうかは疑問である。僕は国立美術館の中にレストランがあることを提案する。すると男もそのことを知っており、議論はまとまる。女は議論に参加しない。

僕と男はたばこを吸いに1階に降りる。大きなドアが、内側からだと自動で開く。曇り空の下、まばらに歩く人々は冬か秋の装いをしており、薄着の私たちには肌寒い。ホテルの客と思われる一人の中年女性がドアの右側でたばこをすっている。ドアの左側の私たちが立った側には腰ほどの高さまである灰皿がおかれている。この都市では建物内部でたばこを吸うことができる場所はどうやら皆無である。

いったん部屋にもどり、身支度を整えてからまちへでる。ホテルの前は市場になっており、キノコや野菜をうる屋台がでている。それらは大きな体をした男達によって、とてもきれいにならべられている。もう8時をすぎているというのに、客足はほとんどない。

南に向かう。マクドナルドやZARAなど、世界中にある店舗が並んでいる。ここあたりは再開発地区である。男は「マクドナルドの値段は東京と変わらない」という。しばらく行くと大きな広場にでる。地下に降りると、ピロティ状になった円柱がグリッド状に配列され、少ない照明の薄暗い中をまばらに人々が足早に通りすぎていく。ここは地下鉄の駅やショッピングモールなどをつなぐ場所になっているようだ。地上に登ろうとすると登山の格好をした若者の集まりが、大きな階段脇にバスを待つようにたむろしている。

私たちはさらに南に向かう。道にみやげもの屋を発見する。そろそろ観光地らしい。旧市街周辺に接近する橋をわたる。静かな湾の水面と、自動車道や列車の橋が、水平方向の線の連なりを作り出している。その向こうには建物と緑が見える。思わず綺麗で僕はため息をつき、写真をとる。女もきれいだといっている。

私たちは旧市街に到着する。それは一つの島の上にあり、丘になっており起伏がある。登りきったところで男はトイレに行きたいと言い出し、坂を下って海沿いの公衆トイレに行く。女もそれについていく。僕はそれを一人高みから見ている。しかし公衆トイレの扉はあかない。コイン式なのだ。近くに店がないため、お金をくずすこともできない。

男は戻ってくる。突然無口になっている。トイレを求めて、歩速を早めてずんずん歩きだす。女も無口になる。彼らの距離はどんどん開いていく。その間を取りもつように、僕は歩く位置を決定する。男に近く、そして女からも見えるように。私たちは島の中央部にわけいっていく。細い道の両側に5階建てくらいの建物がぎっしりと詰まっている。まがりくねった道を進むと次第にまた海沿いにもどっている。

「ちょっと休憩しようよ。カフェにはいろう。」そう男はいいながら海沿いの道の上で僕たちを先導する。女は「お父さん腎臓が悪いからさぁ、心配だわ。」といって僕の顔を見る。僕はあいづちをうつ。先に歩く男はカフェを発見し、中に突入する。しかし、3人は入れないといわれたのかわからないが、外にでてくる。僕は「僕たちはいいから、トイレだけでもいってきたら」という。しかしそれは聞き入れられず、また私たちは道の続きを歩き出す。

海には丸く扁平な島が大小さまざまに近距離で配置され、瀬戸内海とはまったくちがう、水平線が強調された絵のような風景がひろがっている。映画にでてくるような大きな白い帆船がとまり、別の場所には小さなヨットが集まっている。広い空に白い光がやさしくさしている。

私たちはようやくセルフサービス型のカフェを発見する。しかしその中にトイレを男はみつけられない。結局外で用をたしたようだ。しかし女もいきたがっている。さらに僕ももよおす感がある。そこで中で新聞をよんでいる女性に質問する。「すみません、トイレがどこにあるかご存じですか?」「ちょうどその壁(私の背面にある壁だ)の後ろあたりにあると思うけど。でも詳しいことはわからないわ。」「どうもありがとう。」いってみると、そこは奥まった厨房の中になっていて、少し入りにくい。思い切って進入すると扉があり、中はトイレになっていた。女にもそれを教える。

「飲み物を買おう」男がいう。彼はいつも飲み物を欲している。僕はミネラル・ウォーターととカフェ・ラッテと?・ポテトチップを買い、私たちは海沿いにあるベンチに腰掛ける。たばこを吸いながら海を見渡す。通りからはなれ、まわりには3人以外だれもいない。かもめは少ないし、海のにおいもない。吸んだ空気が、ストックホルムの中で、この隠されたポケットのような場所に充満している。

その後私たちは、僕が湾岸警備隊の船かと思われる大きな船に勝手に乗ろうとして起こられたり、男が島と島をいききする渡し船のシステムを解読しようとしてさっぱりわからなかったり(そういう地元の人が使うものに英語表記はないからだ。)、女はなにかと大声でしゃべったりし、そうこうしながらまた橋を越えて別の島にわたり、ダウンタウンの方に向かった。

時刻は10時になっており、多くの人で街はにぎわっている。それでも活気がある、という感じで、歩きづらかったりするわけではない。浮浪者が少なく、大きな犬をつれて歩いている人が多い。私たちは店を物色する。女は「かわいい」「これもかわいい」と感嘆の言葉を連呼している。僕はひとつひとつ店のショーウィンドーに並ぶ商品をチェックする。男は自然と先にあるいていき、僕と女が後方にともに位置することになる。

生活雑貨の店に入る。文房具にはじまり、キッチン道具、トイレ用具などなど、いろいろな商品がおいてあり、どれも魅力的なデザインを有している。これらは同じブランドで作られたものではないが、それぞれの個性を消さずにうまく配置されている。中にはまずまずの人がいるが、こみあっているというほどではない。この都市は、人口密度やものの密度がなにか心地よい。


R1183033.jpg



男と女はあれこれ言い合いながら商品を物色している。ここでは主な原動力や主導権は女にある。彼らはテーブルクロスを購入する。「色がかわいい」からだそうだ。男は「何かかってあげようか。」と優しい声で僕にささやく。僕は断ろうかと一瞬思うが、店で一番安価だと思われる、目的不明の小道具を彼に手渡す。透明で、丸くて厚さが5ミリくらいで、一カ所にマイナスドライバーの先のようなツメがついている。レジの人に聞いたところ、それは「果物の皮に切れ込みを入れるためのもの」だった。ワイルドに皮をむきたい人はポケットに忍ばせるといいのかもしれない。僕はしないけれど。

無用の小道具を一時的にポケットに入れ、まちをあるく。いくつかの店にはいったが、何も買うことはない。ダウンタウンのはずれでUターンし、来たのと同じ道を旧市街方面に引き戻す。11時に開店した店が相当数あり、立ち寄るものの、何も買わない。颯爽と巨大な白い犬が飼い主とともにまちにあらわれ、女が感嘆の声をあげ、男が「写真をとってもらったら」とそれに応答し、僕は半ば命ぜられた格好となる。僕は先回りし、横断歩道が赤になったところをみはからって、その2ショット写真をとる。

「市立美術館」で明日のチケットを購入する。僕は目的の行動をスムースに完了した満足感にしばらくひたる。

旧市街に戻ると人であふれかえっている。飲む店、食う店、服の店、絵の店、おみやげの店、陶器の店、その他もろもろまちのすべてが、いま店を開かずにいつ活動するといった雰囲気である。男は昼食の物色をしており、「牡蠣があるはずだ、牡蠣が!」と僕に対してか自分にたいしてかわからぬ声をあげている。女はショーウィンドーチェックに余念がなく、時々感嘆の声をあげている。

牡蠣はなく、女は何も買うこともなく、私たちはいつしか小さな三角形の広場にでる。木々が車路をのぞいた部分に3本たち、その下に深緑色のベンチがおかれている。さきほどの喧噪から少し離れて、おちついた丘の中腹で、僕は緑色の透明なswatchを眺める。それは12時20分を指しており、僕は「もうパレードが始まっている!」という。私たちは王宮の方へ向かう。僕は去り際に広場の隅の斜路と広場の平坦な部分の境目に、めだたない古地図屋を発見する。僕は後戻りし、のぞき込み、それらの表現に見入る。店は奥の方に向かうにつれだんだんと暗くなっており、そこらじゅうににたくさんの紙がぶらさがったりおかれたりしている。なんというか、終わりゆくものの趣きがある。だがそれをしばらく見ていても、男も女も待ってくれる気配はない。


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僕は彼らを追いかけ、道がまちがっていると忠告する。男は地図をもたずに勘でうごいており、女は方向感覚をもたずに後をついていく。僕は複数の地図をもち現在地を確認している。中世につくられた街は道が曲がりいりくんでいるのだ。しばらく歩くと合奏隊の音がぼんやりと聞こえてくる。

私たちは王宮前の広場に到着する。巨大な人だかりができており、この街のどこにそんなに人がいたのかと驚く。男と女は人混みをかき分け前に前にすすみ、僕はその後につづく。たくさんの頭ごしに、20人ほどの演奏者がみえる。先頭の一人が棒を振ったり回したりして指揮をとり、その後方で、ドラムや鉄琴やトランペットやトロンボーンが、なかなか息のあった演奏を繰り出している。

周りはみな演奏に注目しているように見える。僕は円形の広場に注目する。列柱をとりつけられた壁がマーチの音を反響させ、増幅させている。すこしくぐもった音が聴衆全員にとどき、街への流出は最小限に抑えられている。日々代わり続ける観光客は、一時的に空にむかってはなたれたこの巨大スピーカーの反響板となって、身を振動させる粒の役割を果たす。

男と女は落ち着いた顔立ちの寛容そうなレディに場所を譲られ、列の最前列に移動している。僕はすこし申し訳ない気分になり、バランスをとるかのように一番後方に移動し、王宮の進入禁止を暗示するロープによりかかる。巨大で堅くできた壁に列柱がとりつき、そこにひだひだの線模様や、丸いたくさんの穴がみえる。すべての柱の両側に、視点を確保するために台座に足をかけながら人々が登っており、比較すると柱や建物や穴の大きさがよくわかる。

マーチは30分近くつづき、合奏隊はようやく街へむかう道の上に設けられた門の方をむく。僕は彼らをみることはできないが、ロープによりかかり楽に時間を過ごすことのできるエアーポケットのような場所から、集まった人々と高さ9mほどの建物と空をぼんやりと見ている。音はますますくぐもり、底知れぬ何かに吸収されている。雲のふわふわした弾力と吸音版のような壁と人々の皮膚とが、感知できないスピードで振動している。マーチはついに門を通過し、街へ出ていく。人々は解散する。

私たちは「市立美術館」に向かう。旧市街から1km程だ。にわかに雨が振り出す。僕は折りたたみ傘をもっている。美術館の中のレストランで昼食をとる。ほとんど席があいていなかったため、しまった、と思ったが、運良く端の方に見つけられた。男と僕はビールを飲み、肉を食べる。女はスープを飲む。たばこを吸うことはできない。

僕が「ここらへんで別行動にしたい」と切り出し、私たちはレストランで解散する。集合はホテルに7時ということにする。

僕は美術館内をめぐり、主にレンブラントとオリジナルのモダンファーニチャーがよかったと思いながらギフトショップに行く。記念に一枚絵はがきを購入する。この行為は僕が長年続けている儀式である。ギフトショップの人口密度は高く、僕は知らない人々にまぎれながら、一人になった安心感にひたり、30分ほどをそこで過ごす。とき放たれた鳥が世界に体をなじませ、これからの旅の方向性を決めるために枝の間で羽を休めるように。

その後、また別の島に渡る。橋は狭く、人口密度が高いため、歩行速度をだすことができない。渡りきったところで僕は加速し、坂をのぼり、「現代美術館、建築美術館」に到着する。設計したラファエル・モネオは細長く奥行きのあるヴォイドを組み合わせながら、内部空間の特徴をそれとなくつくりだしている。ポルトガルの片鱗が、白い壁や照明やドアや階段の、やや大ぶりな感触に出ている。それなりの人がいたが窮屈な感じがなく十分な広さがとられている。

展示を見てからセントラルステーションの方へ戻る。雨はつよくなっており、曇の下のストックホルムは押し黙ったように元気がなさそうだ。太い教会の尖塔が不気味な存在感を街に発揮している。エストベリ設計の市長舎に向かうも内部へ入るツアーはすでに16時に終了しており、内部を少ししかみることができない。川のような海を隔てた向こう岸に煉瓦造の刑務所の全景が見て取れ、それが美しいフォルムをつくりだしている。

セントラルステーションから地下鉄に乗る。値段が40クローネ、日本円にして520円と高い。2つ先で降り、200mほど歩くと「市立図書館」がある。しかし閉まっている。入り口で誰かを待っている様子の女の子に聞くと、土曜日は閉館時間が平日より早く、16時終了とのこと。たしかにそういう標示も門にある。残念だ。下調べの重要さを痛感する。エストベリ、アスプルンド、さようなら。

大通りをホテル方向に帰る。スーパーに立ちより、スェーデン産の歯磨き粉とインスタント麺とクノールのアスパラ味の粉末スープを買う。ささやかな日本への土産だ。肉、野菜、魚などなどの内容、値段の安さは、ポルトガルとあまり違いはない。ビールも一缶120円ほどだ。

まちには照度の低いカフェが多くあり、人々がくつろいでいる。看板は少なく、あっても派手でない。いつもは苦労しないのに、地図にマーキングしてある建物を特定することができない。オーディオ専門店をいくつか見つける。ホテルにもどる。

そして夕食にくりだす。男は疲れており、僕と女が先頭に立つ。簡単なピザ屋や「FLYDAYS」のようなチェーン店があるごとに女が「ここでいいじゃん!」と叫ぶ。男と僕は納得しない。しかし、私たちはあるけどもあるけどもいいレストランをみつけることができない。大きな交差点でついに男が先に立ち、すごいスピードで歩き出す。また便意をもよおしたのだ。しかしいい店はない。暗闇の道路脇で用を足し、彼は晴れて私たちのリーダーとなる。


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ホテルから合計2kmほど歩き、一件の高級レストランに決定する。男は断言する。「これは本物だ」と。女は昨日と同様とまどっている。私たちはバーで1時間待機する。ほかの客は予約しているようだ。機敏な女中たちが私たちの席を作りだしてくれる。ロブスターのスープと海鮮盛り合わせのシャンパンソース和えを食す。前者は全身をすりつぶしたようにロブスターそのものの味がしていおり、なおかつ濃厚で臭みがない。後者もうまかった。ちなみにスープは400クローネ(これは3人で回し飲み)、シャンパンソース和えは600クローネ程であったと思う。

タクシーでホテルへ帰る。明日の朝食の時間は7時半だ。傘をかわかし、写真を整理する。昼、空へ打ち上げられたパレードの音を僕は思い出す。それはくぐもりながら雑多な人々の振動を含み、雲に届き、雨を降らせた。それまでバランスをとっていた私たちは2人と1人に分裂し、僕は自由にとき放たれたものの、その後うまいこと行動できたとはいえなかった。一人になった僕は旧市街や曇り空と友達になったかのように不安定でよりどころがなくなり、グリッド状に割られた新市街をさまよった。地図上では単純であったはずの街に、坂や高速道路、立体交差があらわれ判断力を停止させた。加速した足の動きを制御することもできなくなり、心臓の鼓動だけが速まっていった。

そして、それを打開させたのは、男の猛進と女の叫び声であった。


2010.10.05(Tue) - 接待2


1日目



100917

コペンハーゲンを経由して、ストックホルムの空港に到着。はじめにやったことはATMでお金をおろすこと。次に市内へ向かうバスの券をかって、それからたばこを吸う。コペンハーゲンの空港内ではたばこをすうことができない。機内では大変つらかった。だから1本が特においしく感じる。

青い光が空にある。明らかに日本ともポルトガルとも違う空。バスをまつ場所から、コンクリートの高速道路や立体駐車場がみえる。小さな鳥がとんでいて、鳴いている。車は少ない。人も少ない。大きなバスが行き、すぐに別のバスがやってくる。

青い車体の市内に向かうバスの中には、黄色い手すりがついていて、あたたかい。外は長袖でなければ寒いくらいだ。それから、バスは2台続きのタイプだから、とても広々としている。乗客は前方の車両に集まり、後方には私のグループ三人と、ほかに2人しかいない。

市内にむかうバスが出発する。日はほとんどくれており、道に暗闇が迫っている。細身の照明塔の列がカーブに沿ってたち、私たちと同方向に進む車がそのうえを走り抜け、追い越していく。道の幅は大きくとってあり、車は十分なスピードをだすことができる。路面はスムースで、私たちのバスもかなりのスピードをだしているが、揺れはほとんどない。

遠くをみわたすと、大きな起伏のない大地が続いていている。細い木が集合した林と、きれいに刈られた芝生のなかで、アウトバーンはゆったりとスペースをとっている。しばらく走ると、光看板と建物や工場がいくつもあらわれる。それらも大きく間隔をあけながらゆったりと配置されている。内部に光はあまりともっておらず、看板がにぶく壁面を照らし出している。

私たちは市内地に入る。数名の乗客が、いくつかの小さな停留所で降りていく。スーパーや日本食レストランは見えるが、街にひと気はあまりない。石づくりの5~6階建ての建物がぎっしりとつまった街。しばらくしてバスはセントラルステーションの横の、大きなターミナル駅に到着する。乗客は足早におりていく。


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バスターミナルにはタクシーが何台かいて、乗客をまっている。私たちの場合、ホテルまで500mほどの距離であったので、歩くことにする。まちに地図はない。信号の連なりを抜けると黒い闇のなかに高速道路のうねりが続いている。方向を間違えたらしい。日本でプリントしてきた地図を頼りに道を探す。ようやく目的のホテルの看板をみつける。"Rica Hotel"。ドアの前には、コートを羽織りたばこを吸う女性たちがたむろしている。その一人が、親切にドアをあけてくれる。

巨大なデパートと一体となったこのホテルの、4階のチェックインカウンターは閑散としている。肩幅のひろい青い身なりをした受付嬢が2人立っている。僕はたくさんの予約証明書の入った透明なA4サイズのファイルから、必要な用紙をそのひとりに手渡す。彼女はパスポートをうけとらない。スムースな手続きが進む。私たちの部屋は9階である。朝食は7時にはじまり、11時までである。ついでに今日の晩飯の場所も聞く。「この近くにいいレストランはありませんか?」「どんな料理でしょう?」「トラディショナルなもの。」「たくさんあります。」「ではあなたのおすすめのところを教えてください。」そして、彼女は2カ所のレストランを教えてくれる。

9階は静かである。製氷器も音をたてていない。僕は部屋に入る。長細い一人部屋にところ狭しと棚や冷蔵庫や机やテレビが配置されている。それらの色はブラックで統一され、白いシーツのかかったベットの背面の壁面の一部だけに、緑色の花柄がついている。私は無造作に荷物を置き、シャワーで体を流す。トランクをあけ、すばやく着替えをすまし、部屋をでる。

ともに旅をつづけていくことになる、2人の大人の泊まることになる部屋に向かう。僕からみれば両者とも相当な大人だ。一人は1955年生まれの55歳の男で、髪には白髪が生え、体には多少肉がついている。もう一人は44歳の女で、男の再婚相手である。ちょうど彼らは今年の4月に結婚した。重要なことはこの男が相当な金をもっているということで、そのせいで、たとえば僕なら一晩10ユーロとか20ユーロですましてしまう一晩のホテル代に、私たちは100ユーロとか200ユーロとかかけるのだ。それで、もっと重要なことは、この男が僕の父親だということだ。

彼は僕に旅のプランナーたる位置づけを今回与えた。今回の旅について僕に相談を持ちかけたのは3月か4月、そのくらいだったように思う。最初はイタリア方面、あるいは東欧、チェコ、ハンガリーあたりをまわるようなことをいっていた。この男はおいしいものに目がなく、食事が最大の楽しみであり、南イタリアのパスタやら何やらに東京のリビングルームから焦点をあわせていたのである。そういうとき決まって彼は「おいしいものを食べて気分が悪くなる奴はいない」といい、にやっと笑い、私たちを説得におとしこむ。

しかし、次第にはなしは北欧方面ということになっていった。それは僕がイタリア行きに反対し、それに女が同意したからである。僕は大学の奨学金でポルトガルに留学していたばかりで、正直ラテンの国はもうたくさんという気分でいた。そこで対抗馬として北欧を持ち出したのである。日本でもてはやされている「北欧デザイン」の家具や日用雑貨の類。これに女は目がなかった。それに、フィヨルドやオーロラといった家族で楽しめるようなものがたくさんある。これに父は魅力を感じたようで、オーロラ手配を僕に命じた。しかしオーロラもフィヨルドも、結局見に行く予定にはならなかった。それには2つの理由があって、一つは時間がかかりすぎるということ、もう一つは僕が行きたくなかったからである。

これでは僕が悪者のような感じだが、実際にそうなってしまったのである。男と女は僕に絶対的プランナーたる立場を与えたのだ。どの都市にどれほどの時間をさくか、どの程度のホテルに泊まるか、つまり彼ら自身の旅行で彼らが何をするべきか、その大まかな枠組みは僕の手中に存在しており、決定権は押しつけられた状態でやってきたのだ。

僕の部屋から20mほど歩いたところにある、彼らの部屋をノックする。男が扉をあけると彼らの部屋の内部空間が広く視界に入ってくる。明かりはこうこうとついており、フローリングの美しい木目に反射している。女は2つ並んだベットの上に座り、夜景がすばらしいという。私が窓辺に行くと、そこから黒くそまった街の屋根裏とそこからつきだした教会の巨大な尖塔が見える。月が低く輝いている。僕は思わず写真をとってしまう。振り返ると男は歯を磨いており、この部屋は正解だという。僕をほめているのだ。少しして、私たちは夕食を食べに出発する。

フロントの女性が教えてくれたレストランのうち、とりあえずということで近いほうのレストランに向かう。1階に向かうエレベーターの中で、男が、「RICAホテルというのはチェーンなんだって」という。少し自慢げに聞こえたが、そのことをネットで予約した際に、僕は知っている。道を探しながら歩いて2分ほどでレストランにつく。赤い張り出し屋根と黒く統一された家具が高級感をかもしだしている。男は即座に「ここだ」といい店内に突入する。女は少しとまどっている。僕は男の後に続き、その後ろから女が店内に入る。このようなときのこの男の行動力は頼もしいと、僕は思う。

店内はうす暗く、大きな間隔で取り付けられた、小さな暖色系の照明とまちのひかりがよく観察できる。4人掛けのテーブルに通された。メニューが運ばれてくる。横を見ると2人の女がパフェを食べている。どうやら夕食時ではないようだ。男と僕はいろいろと言い合ってメニューを絞り込む。それは一種の掛け合いのようなものだ。ハムの盛り合わせ、アスパラガスのリゾットなどなど。女はメニュー選びにいっさい参加しない。

「飲み物は何にする?」「何でもいいわ」「何でもいいって・・」「だって私メニューみてもわからないもん」「赤ワインはどう?」「いいよ」「じゃあ僕たちはビールで。」男と女は僕にそうやって注文を促す。僕がウェイターに注文を伝えると、比較的短時間ですべての注文が机の上に出揃う。スムースだ。男がハムは鹿ではないか、と、ウェイターを呼び止め、質問する。「ビーフ、ディアー、レッドディアー、エルクになります。」「エルク!」男はウェイターが行ってしまった後で顔を後ろにひきつりながらいう。勘弁してほしいというように。

男は女にエルクについて説明している。スポットライトのあたった料理と男と女の向こうに、食事をしている人々がみえ、それは口を大きくあけて笑いながら楽しんでいるようにみえる。右の店の奥のほうには明るいバーカウンターと調理場があるようだ。その後、私たちは食事を終え、街を散策する。女はお菓子や日用雑貨をみるたびに「かわいい」といい、男はたばこを吸い、ある店で自分を含めた3人にペットボトルを買い与える。僕は人々と街をぼんやりとみている。私たちはホテルに戻る。僕は即座に寝てしまう。


2010.10.05(Tue) - 接待2





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