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書評 2015 Spring

aaq

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015


ブライアン・エヴンソン 遁走状態

大切なときに自分自身の声を、言葉を、うまく発することができない。だが一人になることもできない。努力をしようとしたり、何かの役目を引き受けたり、誰かに頼ろうとすることを、止められない。追求と逃亡、理解と無理解、信頼と裏切り。それらを単なる出来事の連鎖として描くのではなく、登場人物の内面「処理」と一緒に提出すること。
独り言をいっているにもかかわらず、話し相手として読者を想定しているかのようにすること。妻を受け入れるのと引きかえに、同程度の要求を妻に受け入れさせようとすること。どんどんと本当のことがわからなくなり、自主的にものを言わなくなっていくこと。
ホラーのような明るみの見えない世界をはっきりと土台として、その世界の運行プロセスは単なる恐怖だけではなく、作者の言葉通り、そこで人々はそれぞれの持ち味を発揮して「何とか生き抜こうとしている」。

「追われて(a pursuit)」
二番目の妻の好みの煙草はダンヒル。元夫は三人の元妻から、ダンヒルを吸って集中力を高めながら、逃げ続ける。
p26「もしかすると君は、運転している私の隣に座っている君は、自分だけは説明を受けてしかるべきであると感じているかもしれない。」
「私の隣には誰もいない。フランス人の言うごとく、私は独り言を言っている。」

「助けになる(Helpful)」
両眼と鼻を失った男が、自らを助けようとする妻を避け、新しい自分なりの生き方を獲得していく。
p223「同じ空間にいても、その空間で違った生き方をして、違った世界を占めているのだ。(中略)妻にはそれさえわからない。とはいえ、こっちも努力はすべきだろう。助けになろうとするなら、させてやろう。彼は何度も妻の背中を軽く叩いた。
でもなぜ、と彼の中のある部分が問うていた。なぜお前の世界で関係を持たなくちゃいけない?なぜ俺の世界じゃない?」

「父のいない暮らし(Life without Father)」
父の自ら招いた偶然の死を見ていた少女は、母が死の原因だと警察に話してしまう。
p238「叔母さんは寄ってきて、片腕を彼女の体に回した。「ねぇ、ダーリン」と叔母さんは言った。「ごめんなさい、余計なこと言っちゃったわね。あなたの気持ち、わかるわ。何といってもあなたのお母さんだものね。でも忘れちゃ駄目よ、お父さんのことも」」
「だって」とイリーズは言った。
「あなたのお母さんがいなかったら」と叔母さんは言った。「お父さんはいまごろまだ生きてるのよ」
p241「しばらくしてドアが開き、母が連れてこられた。」
「母は不安げに、娘に向かって微笑んだ。
「ダーリン」と母は言った。「お願い、この人たちに言ってちょうだい、私と関係ないんだって」」

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015


古井由吉 妻隠

一言でも引用でも表せない魅力とは、このような作品のことを言うのだろう。とにかく読んでみるしかあるまい。
読了後の満足感とは裏腹に、振り返ってみるととらえどころの難しい作品だという風に感じた。
描かれている風景は、主人公とその妻、その階下に住む若者たち、時折現れる老婆に加え、アパート、その周辺、会社と、いたって整理されている。そして、それぞれの特徴も、特別かわったところもない。激しく物語をゆさぶる事件もない。
それ故に、微妙な会話や言語のあやは強調され、人々の行動は変容し、かたちをあらわす。
物語にドラマチックなところはなく、どこにでもありそうな断片がつなぎあわされて、どこにもありえなかった人々の距離感がたちあがり、そっくりと提出されてくる、この不思議な感じ。
とても良い。
特に何も言おうとせず、教えようとせず、何もかも放棄したお喋りのようなのに、力んでいないのが良い。

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015


柴崎友香 わたしがいなかった街で

切実さがある。衝突があり、血があり、戦争がある。ときに遠く、ときに近いにせよ、確かな感覚を求めていく緊迫感がある。文章の巧みさは幾分ではあるが影を潜めている。だがしかし、全体をみてみると、あらすじすらもない。それでもすんなりと読めてしまうから、それが文章の巧みさと、切実さのなせる技なのだと思う。
主人公の感覚と視点は揺れ動く。主人公の知り合いに、突然視点が移り、また元に戻るように、うつろう。それでも何かひとつの感覚が結実していくような構成・雰囲気がある。その感覚は、だがしかし、他人と直接的にしっかりと共有されることはない。そこの衝突具合、共有されないことでの孤立感のようなものがあまり描かれず、むしろ、まっすぐと楽観的な死の感覚のようなものに主人公が近づいていくあたりが、また熱すぎない感じで、不思議な魅力がある。

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015


柴崎友香 きょうのできごと

あらすじだけがあり、ドラマや結末がない。そのことによって文章の巧みさが際だっている。切実さはない。だから心に「ぐさり」とは刺さらない。心の表面を、かんなで削って薄い破片にしていくような感じだ。そんな薄い感覚が、ますます文章の巧みさを際立たせている。

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2015.05.29(Fri) - 書評 2015





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