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小銭

台風一過の東京
社員の一人がエスケープ
残された仕事は俺たちの身に降りかかり
置き去りにされた現場は無法地帯

今日も深夜まで清掃
汚れた作業服にくるまれた体ひきずって
自動販売機の前に立つ
迷った末にサイダーを選ぶ。さっきも飲んだけれど。

別にただ喉をうるおせれば
そんなにたくさん、選択肢はなくてよかった。
受け皿からこぼれ出た10円玉は、
腰をかがめるのも面倒だし
そのまま置き去りにして帰ろう。


明くる日の休日
13時まで眠った。
開いた携帯に着信履歴。
男たちの仕事に終わりは無い。

資格取得のための塾を休む。
先週も台風のために休んでしまった。
費用は遠い親戚持ち。
いくらとは言わないけれど、馬鹿にならない値段だ。

喫茶店に行って、ミルクコーヒーを飲もう。
語り合った夢みたいに、大きくならないでもよかった。
大切なのはこの小銭。
これがあれば空しい今日も
まぶたの上の痛みもなくなるだろう。


・・・置き去りにされた小銭を集めて
東京にしがみつくぼろ雑巾みたいな奴らで
一晩パーティーを開こう・・・


別にただ喉をうるおせればよかった。
給料がいくらだとしても関係ない。
大切なのはこの小銭。
遠い親戚の祈りは
見えない場所でまだ、響き続けている。


2011.10.12(Wed) - 詩と作文


1号館

地下室でシャワーをあびたあと
ながれこむ空気がつめたくて
白くてかりを放つ床のうえで
ただ単純にふるえていたんだけれど

エレベーターがひらいたとき
知らない部屋のひとつの扉から
水色のレギンスをはいたひとりの女が
うつむきながらやってきて

ぺたぺたと音がした
彼女ははだしだった
手にはコピー用紙が零れ落ちそうなくらい入った
紙袋をかかえて

もうすぐ消えてしまいそうなくらい
またぺたぺたと音をたてながら静かに
先におりた彼女はまた
ひかりでみちた廊下をあるいていった

つみあげてもつみあげても
崩したくなる衝動、壊されてしまう恐怖と戦いながら
謎だらけのこの建物のなかで
僕たちは寝て、起きて
ときにはこんなふうにお互いに
みるはずのない後姿をつむいでしまう


寒い一月だけれど
ぼくのいつもいるこの煉瓦の館のなかはあたたかくて
階段の途中の窓からは
葉っぱを全部おとしきったイチョウの木がみえた

この建物にきて一年くらいのあいだは
三階につくとどこかの部屋から
するするとバイオリンの音が
ながれだしてきて

いつもたちどまってしまう
固く閉ざされた扉のむこうから
いくども同じフレーズがくりかえされて
同じ場所 同じ時間に

結局それが誰かもわからないまま
いまはもう聞こえなくなってしまったけれど
静かな扉のまえあたりの一面は
白いひかりでみちている

つみあげてもつみあげても
崩したくなる衝動、壊されてしまう恐怖と戦いながら
謎だらけのこの建物のなかで
僕たちは寝て、起きて
ときにはこんなふうに一人きりで
少しときがとまったような時間をすごすこともできる





2011.01.15(Sat) - 詩と作文


ニューヨークのイギリス男

私はコーヒーは飲みません。私はお茶を好むんです。
私はトーストも一方の面だけを焼いたやつと決まってます。
話すときのアクセントでわかると思いますけど
私はニューヨークにいるイギリス人です。

フィフス・アヴェニューを下っていく私を見つけたら
杖がそばを歩いているように見えるかもしれません。
こいつはどこでも一緒です!
ニューヨークにいるイギリス人です。

私は外国人。
私は合法的な外国人。
私はニューヨークのイギリス人男性。

つまりは、外人。
ちゃんとした外人。
ニューヨークのイギリス男。


もし“礼節人を作る”ってことなら
あいつはこの町のヒーローなのにな。
無視されたり笑いかけられたりもするんだろうが、
何をいわれたとしても自分をまげようとしない。

私は外国人。
私は合法的な外国人。
私はニューヨークのイギリス人男性。

つまりは、外人。
ちゃんとした外人。
ニューヨークのイギリス男。


謙虚さ、正しさって悪いうわさを招くじゃない。
あなた、ただ一人死んでいくってことになりかねない。
穏やかさ、まじめさなんて、この社会にはほとんどないのよ。
・・・夜、ろうそくの光一個が、太陽より眩しい。


人を作るのは武器にあらず
銃のライセンスにもあらず
正面から立ち向かえ、出来るだけ戦いは避けよ
紳士は歩くもの。走るべからず。

もし“礼節人を作る”ということなら
彼はこの町のヒーロー。
無視されたとしても笑いかけられたとしても
何をいわれたとしても自分をくずしたりはしない。

何をいわれたとしても
自分を曲げたりはしない。

何をいわれたとしても
自分を曲げたりはしない。

私は外国人。
私は合法的な外国人。
私はニューヨークのイギリス人男性。

つまりは、外人。
ちゃんとした外人。
ニューヨークのイギリス男。


(Sting ”Englishman In New York”訳)


2010.11.04(Thu) - 詩と作文


3日目前半(要点)

100919・要点・前半

静かな一人歩き
空に鳥が飛ぶ。丘に向かう。
斜面と道、墓が遠くのほうに見える。

丘の上は平たい広場になっていて
一人の女が体操をしている。
景色をみる。
それを写真でとる。するとすぐに女は走り去る。
広場の中央に正方形に切られた石の囲いのなかに、
花の残骸が捨てられている。

火葬場の裏側に到着する
ファサードは同じで、そちらもまた表側のように見える。
足が痛くなってくる。
アスプルンドの言葉が頭によぎる。
「今日は私、明日はあなた」

後戻りして、まっすぐの道を往復する
入り口にたまった人だかり。
黒でまとめたガイドたち
日本人たちの会話が聞こえる。
参加証であるシールを腕にはる

先ほど通った右側をまたいく。
集団で歩くのと一人で歩くのとはまたちがう。
山岳部のようにもくもくと皆歩く。

丘を越え、林にはいる。
アスプルンドの設計した小さな教会につく。
入り口の門の手前でガイドが説明する。
「上に掲げられたカメオには、書いてあります。
”今日は私、明日はあなた”と」

林の中の芝生の上に、小さな墓が無数に点在している。
それらはよく見ると、直線上に並べられている。
ガイドがいう。
「すべての墓の位置は、
コンピューターによって管理されています。」
墓の大きさにはばらつきがあり、献花の様もいろいろだ。

森のまっすぐ伸びる道の先にみえる、
ギリシャ神殿にむかって歩く。
それはもうひとつの教会で、レヴェンツという建築家の設計である。

神殿風のファサードが模様のない茶色の塗り壁についている。
内部は、西側についた大きな窓から入ってくる光にあふれ
乳白色の壁には、大きくなめらかな、
ひび割れたような模様がついている。
それらはとても美しく、僕の心をゆれうごかす。

僕は質問する。「これはどうやってできたのですか?」
「これはコンクリートでできていますが、外壁の防水加工が確実ではありませんでした。水が進入したためにできた模様です。」

ガイは続けて言う。
「レヴェンツは数学にとても秀でていました。」
内部の要素の寸法の関係はよくわからないが、
きりりとした緊張感につつまれている。

ガイド・ツアーは森の中の小屋で解散となる。
アンケートが配られ、僕はそれをすばやく記入し、
小屋の中のトイレに急ぐ。
しかし中に誰かが入っている。
小屋の中を僕は尿意をまぎらわすためにぐるぐると周回する。
トイレはようやく開き、僕の尿は放出される。
ようやく緊張感から解放され、ドアをあけてみると
たくさんの日本人が、苦しそうな顔をして廊下にならんでいる。

ある部屋ではカフェとギフトショップが一体となっている。
ガイドが先ほどとはうってかわって疲れきった表情で
椅子に座り、パンを食べ、コーヒーを飲んでいる。
その横のギフトショップでは壁にむかってたくさんの人が立ち、
売り物の本をぺらぺらとめくっている。
僕の頭のなかは、レヴェンツのことでいっぱいであり、
彼の2つの教会が紹介された作品集を購入する。

僕は戻り道をいく。
入り口の外で、不思議に高さのそろった並木が出迎える。
車が60kmほどのスピードで通り過ぎる。

列車に乗り、ある駅で乗り換えの為に列車を降りる。
長いホームを一人あるく。
時刻は1時である。
日は低く、空は晴れており、駅の外は静かだ。
子供たちが遠くの鉄橋をわたって広くとられた乗換駅にやってくる。

別の線のとある駅で下車する。
レヴェンツの設計した教会がこのすぐちかくにあるはずだ。
濃い茶色の煉瓦でできた建物だ。
ぽっかりとあいた緑の林の中に隠れて、
それは密かな存在感を示している。

その背後に集合住宅があり、
その方向に人々があるいていく。
僕は彼らに混じって教会に近づく。

前を歩いていた2人の女が入り口近くまで近づいてから、
どこかへ立ち去る。
礼拝堂の中には誰もいない。
そこは静けさと暗さと光が充満している。
たくさんの小さなオレンジ色の照明がつるされている。
50mほどいった正面に祭壇が見え、
木製の長椅子がきれいに並べられている。
高窓や壁と壁の間にあけられたスリットから、天空光がさしている。
煉瓦は黒に近い茶色を発光している。

木製のおおきなパイプオルガンが、
工場に新しく導入された機械のように居心地悪くおかれている。
僕はその近くに座る。
スピーカー用と思われる電気コードが、
湾曲した屋根にそってきれいに設置されている。
それは壁まで伸び、ギザギザに折れ曲がって取り付けられている。

デジタルカメラを取り出し撮影する。
電子音が誰もいない部屋の中に発せられる。
僕はしばらく休憩する。
だれにもみられないように、水をひとくち口に含む。
それはのどを通り過ぎ、胃に達する。

僕は席を立ち、礼拝堂をつぶさに見回り
教会の内部、周囲を散策する。
十分な距離をとって囲むようにして設けられている道の上を、
子供たちや大人たちが通り過ぎていく。

僕は集合住宅に足を向ける。
線形に並べられた建物の間に、しずかに入り込む。
植えられた木々の先に、
カラフルな遊具が並べられ、
たくさんの子供たちが、にぎやかに遊び回っている。
建物のベランダも様々に工夫されている。
すべてがきれいに整理されている。

2時半ごろ列車に乗り、セントラルステーションに戻る。
ファースト・フード店で食事をとる。
名前はMAXだ。有名なチェーン店とガイドブックにかかれてあった。
時間がない。目に入った看板を指さして注文する。
「ディップがつきます。」
兄ちゃんが注文カウンターに貼られた小さなメニューを指さす。
「・・・チリソース。」
僕の答えはしばらく通じない。
チリソースの発音が通じない午後3時前。

小さなハンバーガーと大きなハンバーガー、
ポテト、チリソース、コーラ。76クローネ。それは1000円くらい。
まさか2つハンバーガーがついてくるとは思わなかった。
でも確認する気もおきなかった。値段が高いとも思わなかった。
チリソースの発音で精一杯だったのだ。

食べきれずに小さなハンバーガーを手に持ち、
ホテルに3時に戻る。
ぴったりだ。
カフェで男と女が待っている。
2人はこまをもっている。
もてあまして僕との時間をまっているかのように。



2010.10.24(Sun) - 接待3


切て貼れ


1022

写真美術館へ。所蔵品の中から、よせあつめられた肖像画群が展示されていて、その中にいくつかいいものがあって、階上の附属図書館へいって、気に入った作家たちの写真集をみたが、それらはあまり心に響かなかった。どうやら一枚一枚見ていったほうが面白いようだと思った。

葉巻をとられたチャーチルがおもちゃをとられた子供のような無邪気さをかいまみせている、その背後にすっくとたったヘミングウェイは文庫本のカバーの作家紹介の口絵と全く同じ目つきで風貌で、無名のヒロシマの女の子を左前ににらみ彼女の白くなってしまった眼は見えない空を見上げ、その隙をねらって次のコーナーの影からいたずらをしかけようと悪さをしようとたくらんでいた2人のヤンキーのうち一人は不審をとがめたニューヨーク市警にこの男は本当にぶちぎれているのだという形相で銃口を向けてもう一人はそれをなだめようとしていて、その2ブロック先では観光に訪れた一昔前によく見たような日本人の群がプールサイドの木陰にところせましと陣取っている、つきあたりの路地を入って街区の中心部に面する4階の部屋ではかわいらしい音を立てて切られているピーマンの横でもうひとつのピーマンが最期の輝きを暖色照明によって放っていて、食事用のテーブルの上には果物がつつまれていた新聞紙をメイドが時間つぶしに丸めてひねてつくったモディリアーニのように細身の人形が玉遊びをしている。

ビアホールへ行き恵比寿さんを頼んでソーセージを食べたあと、駅前の薄暗い店でカンパリブラッドオレンジとポテトのポン酢和えを食し話し、3つ先の駅の玉転がし場へ向かいそこでカーブをかけるコツをつかめないまま低調な争いが終わったら、向かいの書店でぐうぜん自分の誕生日の本がぴたりとおいてある偶然に出会い、その道のつきあたりの路地を入ったコーヒーショップで話し、店外を歩き、2人は別れた後そのうち一人は階段を登って家に帰り、もう一人は列車の2駅先から50分歩いて家に帰り、寝ておきて歯を磨いくと机の上には誰が作ったのかおいしそうな朝食がのっていて、40分ほどで到着した映画館ではイチョウの間から芽をだした桜の根本で2人がかなわぬ恋をうれいていて一人は紀州家に嫁ぎもう一人はもののけ姫のように山に帰った。


2010.10.24(Sun) - 日本日記





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